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【コラム】11月 霜月 紅葉と色々

《 Belles Fleurs Tokyo フラワーデザインコラム vol.21 》

落ち葉

 11月の旧暦・和風月名は「霜月(しもつき)」。文字通り、霜が降る月という意の「霜降月(しもふりつき)」の略で「霜月」となりました。旧暦の11月は、現在の12月頃にあたるので、霜が降りる時でもあったのです。今では地球温暖化で11月に霜が降りる地域も少なくなりましたが、徐々に冬の気配を感じる11月ではあります。

 11月の行事には、文化の日や七五三など多くの行事がありますが、やはり楽しみなのは紅葉狩りではないでしょうか。

今も昔も変わらず、紅葉の美しさは人の心を惹きつけるものです。『万葉集』に歌われた「黄葉(もみぢ)」は、黄色が強調されていました。時代が進み、平安時代の『古今集』には「紅葉(もみぢ)」と書かれ、赤の鮮やかさが多く歌われていますが、黄葉も紅葉も全て「もみじ」として愛でて心楽しむ姿は、現代も変わりません。

土佐派の源氏物語画帖メトロポリタン美術館

 では落葉樹の葉は、黄や赤にどうして変化するのか。化学変化のお話は別の機会として、ひとこと言えることは、「樹木が生き残るための冬支度」という事です。舞い降りる落ち葉や、踏みしめる落ち葉に、心惹かれるのは、木々自身の癒しの声を聴くからかもしれません。

 今流行している『源氏物語』にも紅葉が出てきます。源氏物語五十四帖の巻の一つ。第7帖に「紅葉賀(もみじのが)」があります。(右図:源氏物語画帖紅葉賀、メトロポリタン美術館)主人公の光源氏18歳の秋から19歳の秋までの1年の出来事を描いた巻です。光源氏は頭中将と青海波の舞を舞いながら御簾の奥の藤壺へ視線を送り、藤壺も一瞬罪の意識を離れて源氏の美貌を認める。光源氏と藤壺の死ぬまで持っていく秘密の話となっています。

今日では紅葉というと華やかな雰囲気ですが、当時の人々は紅葉の赤に無常(人生のはかなさ)を感じ、散る紅葉はやがて訪れる冬の寂しさを、紫式部は「紅葉賀」に重ねたのではと思うのです。

そんな平安の雅な紅葉の秋ですが、もう一つの秋の赤は、別の顔で出会えます。都会の郊外でも、車で30分も走らせれば、ひなびて静かな里山に行くことが出来ます。稲刈りを終えた田んぼや、ススキの穂が銀色になびき、少し冷たい空気が身にまとう澄んだ風景です。

カラスウリ

 雑木林の囲まれた谷戸(やと)では、紅葉と共に、朱や赤や黄の実でも彩られます。里山を散歩すると、残り柿やミヤマガマズミ、ヒヨドリジョウゴ、サルトリイバラなど多くの実が目に飛び込んだ来ます。熟すと次々に鳥や獣たちの餌となり、真冬の頃には実はなくなってしまう赤い実たち。そんな中で、竹やぶや木々の小枝に絡みついた烏瓜(カラスウリ)は、真冬になっても赤い実がよく目立っています。

どうしてこんなにも真っ赤に。ゆらゆらと燃えているのだろう。寒々と枯れ細る藪の中に、真っ赤なカラスウリの実を見つけると、鮮やかな朱の色が意思のような強さを宿している気がします。

現在は、小室真子さんになった秋篠宮家の長女眞子さまの歌に、

烏瓜その実は冴ゆる朱の色に染まりてゆけり深まる秋に

一夜限りの幻想的な白い花を咲かせる、カラスウリ。その情熱の根源を知るためにも、来年の夏まで待つことにいたしましょう。

秋のシーズンコレクション

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