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【コラム】九月は、白露の七草

《 Belles Fleurs Tokyo フラワーデザインコラム vol.19 》

今年の立秋は8月7日の暑い盛りで、8月22日には処暑を過ごし て、9月を迎えます。あんなに大きな声で鳴いていたセミがすっかり影を潜め、ひそやかな虫の音が聞こえてきて、ふとした瞬間に秋を感じる季節。これから毎日少しずつ、小さな秋を見つけることができそうな日々です。

9月7日は二十四節気では白露(はくろ)。白露とは夜に冷気で草 葉に露ができ、それが朝の光に白く輝く様を表したものです。日が昇るとまだ厳しい残暑ですが、朝の一瞬は涼しい、この時期にぴったりの言葉です。「白露(はくろ・しらつゆ)」は、百人一首の文屋朝康による歌に、
「白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬき留めぬ 玉ぞ散りける」

草葉の上で白く輝いている露の玉に、風がしきりに吹きつける秋の野では、まるで紐に留めていない真 珠が、散りばめられているようだ。と、初秋の朝の白露の風景が美しく歌われています。

季節を、日の長さをもとに1年を24等分した暦が二十四節気です。 春夏秋冬の4つの季節を、更に6つに分けて、その時節の特徴的な言葉で表しています。ただ二十四節気は、古代中国の黄河流域の季節に基づいているので、日本の季節と微妙なズレが感じられます。それでも、花と自然を大切にする者にとっては、季節をより深く感じるためのアイテムとなり、暮らしに潤いを与えてくれる季節の表現です。

その二十四節気を、さらに約5日ごとに初候、次候、末候と3 つに分けた七十二候もあります。動植物や天候などの変化の様を表現しています。白露は9月9日から21日で、その期間を3つに区分けして、初侯を「草露白(くさのつゆしろし)」、次候を「鶺鴒鳴(せきれいな く)」、末候を「玄鳥去(つばめさる)」と、季節の移ろいが目に見えるようです。日本独自の季節感である二十四節気や七十二候をテーマにして、花束やギフトアレンジを作ったら素敵でしょう。

白露も過ぎて 9月22日になると秋分です。街の花屋の店先にも、 秋の草花が目につき始めます。秋の草花と言えば、「秋の七草」があります。春の七草が七草粥にして無病息災を祈るものに対し、秋の七草はその美しさを鑑賞して楽しむものです。秋の七草の特徴は見て楽しめるだけではなく、薬用など実用的な草花として昔の人に親し まれたものが選ばれています。

秋の七草は、奈良時代の万葉集の歌人、山上憶良が詠んだ 2首の歌に由来しています。

「秋の野に 咲きたる花を 指折り かき数ふれば 七種の花」と、「萩の花 尾花 葛花 瞿麦(なでしこ)の花女郎花 また藤袴 朝貌(あさがお)の花」の2首で、2首目の朝貌については諸説ありますが、現在では桔梗(ききょう)が定説です。

秋の七種の花の一つであるナデシコの花、特に写真のカワラナデシコの花は、清少納言の随筆「枕草 子」に書かれた、「なにもなにもちひさきものはみなうつくし」です。秋風に揺れる姿は、楚々として日 本の秋の深みまで感じさせる花ではないでしょうか? 晩夏から初秋へ、光の色も深々と。

秋のシーズンコレクション

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