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【コラム】八月 夏の涼花 青い睡蓮

夏の涼花 青い睡蓮

《 Belles Fleurs Tokyo フラワーデザインコラム vol.18 》

ササユリ旧暦八月(今の9月頃)の異名は、すでに秋らしい風物にちなんで、「月見月(つきみづき)」や「秋風月(あきかぜづき)」「雁来月(かりくづき)」などとも呼ばれ、秋の涼しい気持ちにさせてくれます。
 実際の8月は、強い日差しに高い気温で、花にとっても大変な時期です。ヒマワリやマリーゴールド、ダリア、カンナなど、元気で強い花色が目に浮かび、暑いほどです。そんな時は、水辺に睡蓮とハス(蓮)の花を見に出かけませんか。
睡蓮とハスは、どちらも水上に花を咲かせる植物ですが、見分けることできますか。よく似ているけど、分類上は全く異なる植物です。花が咲いている時に見分けるコツは、花の高さです。
ハスは、水面よりも高いところ(1メートルくらい。2メートルくらいになるのも)に咲きます。睡蓮は、水面に浮かんでいるように咲きます。一部、熱帯性のスイレンは、水面から少し高いところで咲くものもありますが、ハスほど高くは咲きせん。また、睡蓮の花びらは、ハスの花びらに比べて細く尖った形をしていて、ハスの花びらは丸みを帯びています。などが、花を見ての見分けです。
 葉っぱでも見分けられますが、植物の講義になりそうですので次の機会にしましょう。

ジヴェルニーのモネの庭ハスの花は、お釈迦様との関係で仏教のイメージがありますが、睡蓮は、古代エジプトの太陽神と結びついて西洋文明を感じます。特に睡蓮は、印象派の画家クロード・モネの「睡蓮(Water Lilies)」の連作で有名です。
 
パリから約80キロ、セーヌ河を下った村のジヴェルニーで制作していたモネは、そこに日本風の庭園を造成します。敷地内の小川を利用して大きな池を掘り、睡蓮を浮かべ、太鼓橋を架け、岸辺には柳や灌木を植えました。この独自の水の世界に隠遁しながら、モネは、「睡蓮」の連作に没頭して、200作を超える睡蓮の作品を残しました。(右上の写真:ジヴェルニーのモネの庭の一部)

モネの青い睡蓮

左の絵は、モネの「青い睡蓮」(オルセー美術館蔵)という作品で、1点だけ描いていますが、この絵は想像で描いたと言われています。
 青い睡蓮は熱帯性の睡蓮で、水温が24℃を超えると活発に成長しはじめ、30℃以上の高温になっても問題なく育つ。ところが、ジヴェルニーは真夏でも水温が24℃にいくかどうか気温が低く、モネは何度も生育を試みましたが、花を咲かせることはできなかったのです。
そんなモネが夢見た「青い睡蓮」を見られる場所が、日本には何ヵ所かあります。その中でも高知県に、ジヴェルニーのモネの庭を再現した「北川村『モネの庭』マルモッタン」があります。ここには、ジヴェルニーの池から株分けされた温帯性スイレンがあり、さらに熱帯性スイレン『青い睡蓮』を見ることができます。
 またパリでは必ず、オランジュリー美術館の特別展示室へ。『睡蓮』の大連作が見る者を取り巻くように壁全面に飾られています。その中央のソファーに座り、水と睡蓮の宇宙に浸ってください。

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