SCHOOL

【コラム】懐かしい人に出会う夏、お盆

蓮の蕾を使った仏花

《 Belles Fleurs Tokyo フラワーデザインコラム vol.6 》

「盆と正月が」という言葉があるように、「お盆」と「お正月」は、古来一年の二大イベントでした。

夏行事左のイラストのように、夏はお正月と同じくらい多くの行事があり、夏祭りや盆踊り花火大会などの中心にお盆があります。

お盆の起源は明確には分かっていませんが、1年に2度、初春と初秋の満月の日に祖先の霊が子孫のもとを訪れて交流するという昔からの日本の祖霊信仰が、初春のものが正月となり、初秋のものが仏教の盂蘭盆(うらぼん)と習合して、お盆なったと言われています。

* 

またお盆の行事は、中国の道教の行事とも関係があり、旧暦(太陰暦)の7月15日の「中元節(ちゅうげんせつ)」の祝いがあり、それが「お中元」の由来にもなっています。

ところが明治時代に新暦(太陽暦、グレゴリオ暦)が採用され、日本の行事は季節感が多少ズレてしまいました。「お盆」の期間(の中心)も例外ではなく、地域によって大きく3つに分かれました。
1.旧暦7月13日~15日(旧盆)・・・沖縄地方など(今年は8月28日~30日が旧盆にあたる)
2.新暦7月13日~16日(新盆)・・・東京、横浜、静岡など
3.新暦8月13日~16日(旧盆・月遅れの盆)・・・その他の多くの地域

あなたのお家のお盆は、旧暦?新暦?それとも八月盆の新暦でしょうか。どの暦のお盆でも、可愛いお供えが置かれます。そう、キュウリとナスの動物です。

キュウリ馬、ナス牛このキュウリとナスの動物は、故人やご先祖様の霊が家に戻ってくる際、行き来する乗り物として作ります。霊が戻って来られる時にはキュウリの馬に乗って一刻も早く家に帰って来てもらい、帰る時にはナスの牛に乗って景色を楽しみながらゆっくりと帰ってもらいたい、という願いが込められているのです。
一般的に、キュウリで作った馬のことを「精霊馬(しょうりょううま)」、ナスで作った牛のことを「精霊牛(しょうりょううし)」と呼んでいます。

* 

蓮の花もうひとつ、お盆に欠かせない花に蓮(ハス)があります。よく似た花にモネが描いた睡蓮がありますが、蓮はハス科ハス属、睡蓮はスイレン科スイレン属で違う植物です。簡単な見分け方は、花が水面より上の方で咲くのが蓮で、水面に浮くように咲くのが睡蓮です。

蓮と仏教には深いつながりがあります。「蓮は泥より出でて泥にまみれず」ということわざが表すように、泥(俗世)に生まれても大輪の蓮華(悟り)を咲かせる蓮は、欲にまみれることなく真っ直ぐに清らかに生きる人間の理想の姿として、仏教の世界で「極楽浄土に咲く最上の花」とされたのです。

* 

蓮の花と極楽浄土を描いた、芥川龍之介の『蜘蛛の糸』を読んでみましょう。

「ある日の事でございます。御釈迦様は極楽の蓮池のふちを、独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃいました。池の中に咲いている蓮の花は、みんな玉のようにまっ白で、そのまん中にある金色の蕊からは、何とも云えない好い匂が、絶間なくあたりへ溢れて居ります。極楽は丁度朝なのでございましょう。」

さてお盆には、故人やご先祖様たちから、蓮の花咲く極楽のお話を聞かせてもらいましょう。

プリザーブドフラワーの仏花特集

トップへ戻る