SCHOOL

【コラム】文月 七月 愛逢月

凛

《 Belles Fleurs Tokyo フラワーデザインコラム vol.17 》

朝顔垣根で朝顔の花が咲き始めると7月、すでに広い地域で梅雨も明けて、これからが夏本番です。
そんな7月の代表的な和風月名は「文月(ふづき・ふみづき)」で、7月初旬の小暑を過ぎてから書き始める暑中見舞いのハガキを思い出します。「ふみのつき」にぴったりの挨拶状ですが、メールやLINEで済ませてしまう現代には、少々戸惑いと憧れのある「文」という文字です。でもまた、花をアレンジしたり束ねたりと、手と指の技に慣れているデザイナー諸氏には近しい文月ではないでしょうか?

名所江戸百景 市中繁栄七夕祭》歌川広重この文月という7月の異称の由来は、「文披月(ふみひらきづき)」が略されたものという説が一般的です。7月7日の七夕の夜に、書物を開いて夜気にさらし、書の上達を祈る風習があったことから、文披月と呼ぶようになったと。また、稲の穂がふくらむ季節から「穂含月(ほふみづき)」などが「ふみづき」に変化したという説もあります。この他にも、巧月、愛逢月、袖合月、歌見月など、七夕(たなばた) にまつわる7月の異称は多く、やはり7月は「七夕月」なのです。
 左の浮世絵は、歌川広重「名所江戸百景 市中繁栄七夕祭」(国立国会図書館蔵)で、江戸時代の七夕飾りが描かれています。この絵のように、願い事を書いた短冊を笹に飾ったことがある方も多いのではないでしょうか。
短冊を吊るして願い事をする風習は、中国の「乞巧奠(きこうでん)」の儀式が由来です。乞巧奠とは、祭壇に針などを供えて星に祈りを捧げ、織姫にあやかり「機織りが上達するように」と願う中国の風習のことです。
当初は機織りの向上を願うことから、徐々に手芸や詩といった芸術全般の上達を願うようになりました。日本には、奈良時代頃に伝わり、和歌集『万葉集』でも、七夕にちなんだ和歌が詠まれています。

夏の大三角よくご存知の織姫と彦星の伝説も、乞巧奠と同じ頃に、中国から日本に伝わりました。7月の異称のひとつの「愛逢月(めであいづき)」は、織姫と彦星が愛して逢う月という意味で生まれた和風月名です。
織姫(織女)はこと座の一等星「ベガ」、彦星(牽牛)はわし座の一等星「アルタイル」という星にあたります。旧暦7月7日(現在の8月上旬から下旬)は、天の川を挟んでベガとアルタイルが最も輝いて見えることから、この伝説が生まれました。また、ベガとアルタイルに、白鳥座の一等星「デネブ」を加えた3つの星は「夏の大三角」と呼ばれ、晴れていれば2つの星の間に天の川が横たわっているようすを観ることができます。
万葉集2052番 詠み人知らず のうたに、
『この夕べ降りくる雨は彦星の 早漕ぐ(はやこぐ)舟の櫂(かい)の散りかも』
七夕の夜に降る雨を、織姫に逢いたい一心で彦星が漕ぐ、櫂から滴るしずくに見たてている歌です。
陰暦七月七日に降る雨のことを「洒涙雨(さいるいう)」といいます。この雨は牽牛と織女が逢瀬のあと、別れを惜しみ流す涙、あるいは逢瀬が叶わなかった悲しみに流す涙、ともいわれる雨のことです。

貴方には、素敵な出逢いが待つ7月になるといいですね。

夏のシーズンコレクション

「凛(RIN)」コレクション

トップへ戻る